「血」について

「血」は、現代医学の血液に近い概念も含みますが、働き(作用)について、異なった概念も持ち合わせております。 一つ目の作用は、全身を栄養し潤す作用です。 血によって「栄気」という気を諸臓器に供給し、機能させます。 例えば、皮膚が血色よく艶があり、毛髪に潤いや光沢があるのも、 また目などの感覚器や筋肉が円滑に働くのも血の栄養作用のおかげです。 したがってこの作用が不足すると、目が乾燥し、視力も衰え、手足の動きが鈍くなり、 シビレを感ずるようになります。この作用は、比較的血液に近い作用ですが、 もう一つの作用には、精神安定化作用があります。 血は、精神活動の基礎物質と考えられており、盛んな状態に対する鎮静作用が機能の主体をなし、 興奮を静めたり、冷静な判断をしたり、機能面では、ゆったりとした状態を提供します。 血が不足すると、多夢、健忘、驚きやすいなどの精神不安症状が現れます。 血の病証には血虚、血、血熱の症候があります。

@血虚とは、血の量的不足(西洋医学的な貧血に相当)と血の持つ栄養・滋潤作用の不足です。 したがって貧血がなくても栄養・滋潤作用の不足があれば、血虚と考えます。 原因は、 (1)生血不足(消化機能が弱く食べ物を食べても栄養が吸収されにくい状態症状)、 (2)血の消耗過多(病気の長患い、ストレスなどによる七情過多の血の消耗、過労)、 (3)出血過多があります。症状は、顔色に艶がなく、白っぽいなど顔色不良。 爪甲に艶がなく、カサカサしている。爪がもろい。唇と舌の色は赤味が少ない。 皮膚乾燥。筋肉の引きつり。目のかすみ。月経の遅れ。月経血の過少・無月経。不眠。動悸などです。 治療は、栄養作用として当帰、地黄、芍薬、拘杞子、 精神安定作用として丹参、酸棗仁、遠志、竜眼肉などの生薬を用います。 エキス剤は、四物湯や加味帰脾湯などです。

A血とは、血の流れの悪くなる循環障害の病態、病理的現象をいいます。 (血のことを日本漢方では、?血といいますが、中医学《中国の漢方》では、 血は、血管にたまって、流れにくくなった血液や血管外に漏出した血液を指し、病理的産物をいいます。) 原因には、

(1)気虚(気が不足することにより、気の推動作用が低下して(気のパワー不足)、血液が流れにくくなります)

(2)気滞(気が滞り、血を動かす気のパワーが伝わりにくくなり、血が流れにくくなります)

(3)血虚(血の不足により血管に流れる栄気が不足します)

(4)血寒(寒邪が血脈を犯すと血流が悪くなります)

(5)血熱(温熱の邪気に犯されたり、臓腑の失調、ストレスなどにより気の流れが悪くなり、熱を持つようになり、血が粘るようになって血流が悪くなります)

症状は、全身性の症状として顔色が暗い、月経異常、冷えのぼせ、肩こり、健忘などで、 局所性の症状は、痛み(固定性で、圧迫すると、さらに痛みを増します。)、しこりや固まり、出血、血腫です。 治療は、生薬として当帰、川、赤芍、牡丹皮、田七、桃仁、紅花などを用い、 代表的エキス剤は、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、温経湯、桃紅四物湯などです。 血の運行は、血自身の機能によって行われるものではないので、 血だけを見て活血(循環改善)だけを考えるのではなく、気の巡りの悪さや熱の不足、湿などの障害物の存在、 気の不足による動かすパワーの不足など種々の原因に目を向けて病態を分析することが必要です。 例えば桂枝茯苓丸には、牡丹皮、桃仁、赤芍などの駆血剤の他に理気剤の桂枝、利水剤の茯苓が含まれています。

B血熱は、熱邪が、血分に侵入し、血分に熱がある状態で、症状は、発熱、鼻出血、口が苦いなどで、 治療は、生薬としては、黄連、黄?、山梔子、黄柏、知母などを用い、代表的エキス剤に黄連解毒湯などを用います。

診療案内

[月・火・木・金] 09:00〜17:00
[水] 09:00〜18:00
[土] 09:00〜12:00
[休診日] 日・祝日

お問い合わせ : 0125-74-2021