「津液(しんえき)」について

津液とは、人体中の正常な水液の総称で、唾液、胃液、涙、汗などが含まれます。 津液の主な作用は、潤いを与えることであり、津と液に区分され、その性質、分布、作用も異なっています。 津は、清く希薄なものをいい、分布は、広範囲で、皮膚体表などを滋潤させます。 液は、比較的粘稠で、臓腑を滋養し、関節運動を円滑にさせます。 ただし物質として明確にニ分できるものではなく、互いにつながりを持ち、 機能的にも連携しておりますので、併せて津液として呼んでいます。 津液は、あくまで生理的なものを指し、物質的に津液に相当するものでも、 停滞や濃縮などによって、生体機能を阻害する存在になったものは、 「湿(湿邪)」や「痰飲」と称され、病因的産物として位置づけされます。 津液の病証には、津液の不足と過剰(水滞)があります。

【津液不足】

症状は、ほてりが特徴的で、鼻、咽頭や口唇の乾燥、声がかれる、口渇、舌質は赤く乾燥し、舌苔が消失し、皮膚が乾燥し、皮膚に張りがなくなる、毛髪に艶がなくなる、目がぼやける、目がくぼむ、空咳、便秘などです。

原因は、津液全体量が不足した場合と気の巡りが悪くなって、津液の運行に滞り来す場合があります。 津液全体量の不足の原因は、

@津液の生成不足(津液は、飲食物が脾の作用によって生成されるので、 飲食の不摂生や摂取不足が津液生成の不足の要因になります。)

A津液の消耗過多(高熱や長期にわたる熱、激しい下痢、 嘔吐や発汗過多、不適切な利尿剤や発汗剤の使用の場合にも津液の排泄過多につながります。)があります。

治療は、生地黄、麦門冬などを用い、 主なエキス製剤に白虎加人参湯、麦門冬湯、滋陰降火湯、炙甘草湯、六味地黄丸などを用います。

【津液過剰】

水滞といわれ、非生理的な水液が体内に貯留した状態を指します。日本漢方では、水毒といいます。

原因は、津液の代謝障害で、主として津液代謝に関わる臓腑(脾、肺、腎)が失調することにより生じます。 症状としては、脾の機能障害があると、胃中の水液が吸収されず、 胃内停水(胃に水がたまって、チャポチャポ音がする状態)や下痢を引き起こします。 肺の場合は、肺部に水がたまり、鼻水や稀薄清澄な痰(寒痰)を伴う咳を生じます。 肺は、皮毛(皮膚)をも主どることから、浮腫やアトピー性皮膚炎などを生じやすくなります。 腎の場合、排尿異常や浮腫を来しやすくなります。 さらに水滞が上昇すると、眩暈(めまい)、動悸、息切れ、多量の痰をともなった咳嗽を生じます。

津液の代謝障害の原因には、

@外邪(風・寒・暑・湿・燥・火は、自然界の6種の異なった気候変化を指すもので、 万物を育み、人体に無害ではありますが、これらの六気に異常(過剰や不足など)が生じると、 人体の適応力を超え、発病因子となる)

A七情内傷(七情とは、善・怒・憂・思・悲・恐・驚の7種の感情の変動で、 通常は、発病因子にならないが、突然強い精神的な刺激を受けたり、 長期にわたってー定の精神的刺激を受け続けたりして、生理的に調節し得る許容範囲を超えてしまうと、 このとき七情は、発病因子になり、疾病を発症させる。このような状況を七情内傷という)

B飲食の不適切

C久病や労倦(長引く疾病や疲労困憊)があります。

治療においては、水滞は、単に津液の総量の過剰ばかりではなく、 生体に利用されない形で過剰になって体内に留まっているものをも指しますので、 その解決策において単に過剰を去るのではなく、脾や肺、腎の働きを良くし、 津液の運行を回復させることが必要です。 すなわち水滞の治療において津液の輸送障害を取り除くことが重要な鍵になります。

水滞は、状態によって湿、痰飲、湿熱などに分けられます。 湿は、症候的には、重だるさ、腫脹が特徴的で、場合によっては、冷感を伴い、 下方に症状が出やすい特徴があります。 エキス製剤には、越婢加朮湯や小青竜湯などを用います。 痰飲は、湿が濃縮された形で、湿よりもさらに可動性を失い、限局性に停留する病態です。 例えば、内耳に起これば、眩暈が生じます。 エキス製剤に半夏白朮天麻湯などを用います。 湿熱は、湿と炎症の熱が結びついた状態です。 副鼻腔炎、気管支拡張症など慢性の炎症性疾患の原因になることが多い病態です。 治療するエキス製剤には、辛夷清肺湯などを用います。

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