「臓腑(ぞうふ)」について

「五臓六腑(ごぞうろっぷ)にしみ渡る。」という表現を耳にしたことがあるかと思いますが、 実は、五臓六腑とは、漢方(正確には中医学)由来の名称なのです。 五臓には、心(しん)・脾(ひ)・肺・腎・肝があり、六腑には、小腸・胃・大腸・膀胱・胆.三焦があります。 三焦《気の管理と水道(水の吸収と排泄経路)を通行させる機能単位》は、西洋医学にはない名称ですが、 他の臓腑は、中医学と西洋医学において名称は、共通しております。

ただし、それぞれの臓腑は、中医学と西洋医学において解剖学的・生理学的・病理学的に一部には、 似ている部分がありますが、ほとんどが異なっております。 そもそも1774年に出版された『解体新書』を制作するにあたり、西洋医学の解剖書を翻訳する時に、 内臓の名称付けを概念が異なっているにもかかわらず、内容を十分吟味せずに、 中医学から借用したため、混乱を生ずることになったのです。 例えば、Heartは、中医学の心臓と翻訳されましたが、中医学の心は、 西洋医学における心臓としての機能の他に、大脳としての機能を持ち合わせております。 ちなみに日本語においても心配、用心、心遣いなどの言葉は、 心臓でなく、大脳の活動によって生じる行為を指しています。

五臓の共通の作用は、精・気・血・津液の栄養物質のエッセンスを生成し、貯蔵することです。 六腑は、五臓と表裏(表が腑、裏が臓)をなし、水穀(飲食物)を受納し、 消化して栄養分を吸収して、糟粕(屎尿)を排泄します。 心と小腸、肺と大腸、脾と胆、腎と膀胱は、経絡でつながっています。 経絡とは、人体内の経脈と絡脈の総称です。

直行する幹線を経脈といい、経脈から分かれて、 体の各部分を網のようにつなぐ支線および経脈と経脈の間の連絡通路を絡脈といいます。 経絡は、全身の気血の通路であり、このネットワークによって生体が機能されます。 五臓は、気・血.津液と経絡で全身の各組織と結びついております。 体の機能的単位が5つの臓器に分けられていますので、全ての病気や未病の治療と予防は、五臓を調整します。 五臓は、それぞれが連絡をとりながら、相互に作用し合うようにして、機能します。 そのことを理解するには、五行学説を知る必要があります。

五行説(ごぎょうせつ)

五行学説とは、人体を含む宇宙全ての事物は、五行(木・火・土・金・水)という 5種類の物質の運動と変化によって生成され、五行(木・火・土・金・水)の間の 「相互に生み出し、相互に制約する」という関係によって、全ての物質世界の運動と変化を説明しています。 同学説は、中医学においては、人体の生理、 病理およびこれらと環境との相互関係などについての理論的根拠として用いられています。 また診断と治療面においても重要な役割を担っております。

五行の自然特性は

@木(もく)は木(き)のように上に伸びやかに自由自在に成長する性質を持っています。 肝には、疎泄(そせつ)の作用(気を巡らせる機能)があり、 抑鬱を嫌うので、肝は、木(もく)の行(ぎょう)に属します。

A火は、炎熱があって上昇する性質を持っています。 そこで温熱や上昇するイメージのある物は、火の行に属しております。 心臓は、全身に血液を循環させ、全身を温める機能を持っていますので、火の行に属します。

B土(ど)については、土(つち)は、植物に栄養を与えますが、 脾は、食物を消化吸収し、気や血を作り出す機能があり、 全身に栄気といった栄養を与える作用がありますので、土(ど)の行に属します。

C金は、いろいろな形に作る事ができ、変革のイメージがあります。 肺は、ガス交換によって暗赤色の静脈血から赤い動脈血に変換する作用がありますので、 金の行に属します。

D腎は、血液を濾過し、体の水分調節をする臓器で、 尿として下方向に排泄することから、水の行に属します。

五行についてもっとも大切なのは、相生(そうせい)と相剋(そうこく)の関係です。

@相生は、五行の中で、ある行が他の行を助長し、育む作用です。 木を焼けば、火を生じ、火は、灰・土を生じ、土(岩石)は、金属を生じ、 水は、木を成長させます。木生火、火生土、土生金、金生水、水生木と循環させます。

A相剋は、五行の中で、いずれかの行が、他の行を抑制し、制約する事です。 木は、土を搾取して成長するから、木剋土、土は、井戸(水)を埋めてしまうので、 土剋水、水によって火が消されるので、水剋火、火によって金属が溶かされるため、 火剋金、金属の斧によって木が伐採されるので、金剋木となります。

五臓についても相生・相剋の関係が成り立ちます。相剋が病的になると、相乗になります。 例えば、ストレスで肝が傷められると、気の疎泄がうまくいかないと、脾を傷め、食欲を落とします。

まとめ

五臓のそれぞれの働きと相互関係をよく理解する事により、 診断と治療において、大いなる手がかりになります。 五臓(肝・心・脾.肺.腎)の働きについては、次回以降にそれぞれ順番に詳述したいと思います。

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